ここやし (ココ椰子) 

学名  Cocos nucifera
日本名  ココヤシ
科名(日本名)  ヤシ科
  日本語別名  ヤシ(椰子)
漢名  椰子(ヤシ,yézĭ)
科名(漢名)  棕櫚(ソウリョ,zōnglǘ,しゅろ)科
  漢語別名  椰(ヤ,yé)、可可椰子、越王頭(エツオウトウ,yuewangtou)
英名  Coco, Coconut, Coconut palm, Coconut tree

 ヤシは、
   ① 広義にはヤシ科の植物の総称、
   ② 狭義にはそのうちココヤシ、
を指す。
 ヤシ科 Arecaceae(Palmae; 棕櫚 zōnglǘ 科)の植物には約190属 約2400種がある。

   Archontophoenix(假檳榔屬)
     A. alexandrae(假檳榔 jiǎbīnláng)

   ビンロウジュ属 Areca(檳榔屬)

   Arecastrum(山葵屬)
     A. romanzoffianum var. australe(山葵・金山葵)

   クロツグ属 Arenga(桄榔屬)
 約14種 
     クロツグ A. engleri(山棕 shānzōng・散尾棕)
     サトウヤシ A. pinnata(桄榔 guàngláng・砂糖椰子・糖樹)

   オウギヤシ属 Borassus(糖棕屬)

   トウ属 Calamus(省藤屬)
      incl. Daemonorops
     ドトウヅル C. beccarii(土藤)
     マライトウ C. caesius(西加省藤・藍灰省藤)
     C. draco
異分類 (Daemonorops draco, Palmijuncus draco;麒麟竭・血竭)
         
『中薬志Ⅲ』pp.560-562 『(修訂) 中葯志』V/745-749 『全国中草葯匯編』下/262-263
     C. egregius(短葉省藤)
     ヒゲフカトウ C. erectus(直立省藤)
     C. faberi(多果省藤)
     ミズトウヅル C. formosanum(C.quinquesetinervis, C.orientalis;臺灣省藤)
     ハンツルトウ C. lobbianus
     C. melanochaestes(Daemonorops jenkinsiana;)
     サケバナヨトウ C. penicillatus
     C. platyacanthoides(省藤 shěngténg)
     C. rhabdocladus(華南省藤・棕藤・手杖藤)
     ステッキトウ C. scipionum
     コウトウミズトウヅル C. siphonospathus(管苞省藤)
     C. tetradactyloides(多刺鷄藤)
     ササバトウ C. tetradactylus(白藤・鷄藤)

   クジャクヤシ属 Caryota(魚尾葵屬)
     C. mitis(短穗魚尾葵・酒椰子)
     C. ochlandra(魚尾葵 yúwěikuí・假桄榔)

   テーブルヤシ属 Chamaedorea(竹節椰屬)

   チャボトウジュロ属 Chamaerops(矮棕屬)

   Chrysalidocarpus(散尾葵屬)
    C. lutescens(散尾葵)

   Chuniophoenix(瓊棕屬)
     C. hainanensis(瓊棕 qióngzōng)

   マガクチヤシ属 Clinostigma(斜柱椰屬)

   ココヤシ属 Cocos(椰子屬)

   コウリバヤシ属 Corypha(貝葉棕屬) 4-5種
     コウリバヤシ
(行李葉椰子) C. umbraculifera(貝葉棕 bèiyèzōng)
         
インド・東南アジア産、葉を紙の代用

   Daemonorops(黃藤屬)
     トウ D. jenkinsiana(D. margaritae, Calamus margaritae;黃藤) 

   Didymosperma(雙籽棕屬)
     D. caudatum(雙籽棕)

   アブラヤシ属 Elaeis(油棕屬)2種
     アブラヤシ E. guineensis(油棕 yóuzōng) 
熱帯アフリカ産
     E. oleifera 
南アメリカ熱帯産

   トックリヤシ属 Hyophorbe

   ウチワヤシ属 Licuala(軸櫚屬)
     L. spinosa(刺軸櫚 cìzhóulǘ)

   ビロウ属 Livistona(蒲葵屬)


   オオミヤシ属
(フタゴヤシ属) Lodoicea(巨子棕屬)

   サゴヤシ属 Metroxylon(西谷椰屬)

   ニッパヤシ属 Nypa(水椰屬)
 1種
     ニッパヤシ N. fruticans(水椰 shuǐyé・燭子・露壁)

   ナツメヤシ属 Phoenix(刺葵屬)

   ヤマビンロウ属 Pinanga(山檳榔屬)
     P. discolor(變色山檳榔・假山葵)
     P. sinii(燕尾山檳榔)

   Plectocomia(鈎葉藤屬)
     P. microstachys(鈎葉藤 gōuyèténg)

   シュロチク属 Rhapis(棕竹屬)
中国(南部)・東南アジアに12種
     カンノンチク
(リュウキュウシュロチク) R. excelsa(棕竹 zōngzhú・筋頭竹)中国南部原産
     R. gracilic(細棕竹)
     シュロチク R. humilis(矮棕竹 ǎizōngzhú・棕櫚竹・竹棕)
中国南部原産
     R. robusta(粗棕竹・龍州棕竹)

   Roystonea(王棕屬)
     R. regia(王棕 wángzōng・大王椰子)

   ヤエヤマヤシ属 Satakentia(琉球椰屬)
 1種
     ヤエヤマヤシ S. liukiuensis

   シュロ属 Trachycarpus(棕櫚屬)

   Wallichia(瓦理棕屬)
     W. gracilis(W.chinensis;瓦理棕・小菫棕)

   ワシントンヤシ属 Washintonia(絲葵屬)
  
 ココヤシ属 Cocos(椰子 yézĭ 屬)は、1属1種。

  ココヤシ C. necifera(椰子) 
    
 和名ヤシは、漢名椰子(ヤシ,yézĭ)の音、ココは英名 coconut の音写。
 したがって、時として古々椰子と書くのは当て字。
 英名の coco はポルトガル語から。「お化けの怖い顔」の意で、実が猿の顔に似ていることからか、という。
 漢土の別名越王頭については、下の誌に引く嵆含『南方草木状』を見よ。
 原産地不詳、フィリピン・オーストラリア(クイーンズランド)に野生状態で更新しているココヤシ林がある。広く世界の熱帯で栽培。
 漢土では、既にA.D.290-307ころ華南で栽培していた。今日では、兩廣・雲南・臺灣で栽培する。
 果実は、卵形又は楕円形、長さ25-30cm。外側に 中果皮の厚い繊維の層(椰衣,yeyi)があり、中に内果皮の硬い核(椰殻,yeqiao)がある。核の内側に 厚さ2-3cmの灰白色の脂肪層をなす胚乳(椰子肉,yezirou;椰肉,yerou)があり、内部の空洞は胚乳液(椰子水,yezishui;椰子漿,yezijiang)で満たされている。
 果実をさまざまに利用する。
 半成熟果の胚乳液
は甘く栄養に富むので、ココナッツミルク coconut milk と呼んで飲用に供し、また脂肪層は食用にする。
 成熟果の脂肪層から搾り取った液体も ココナッツミルク coconut milk と呼び、調味料とする。この脂肪層を乾燥したものはコプラ copra
(椰子仁干,yezirengan;椰子肉,yezirou)と呼び、圧搾して椰子油(palm oil,椰子油,yeziyou)を採り、菓子・マーガリン・セッケン・ろうそくなどを作る。
 未成熟果を採った花軸の切口から糖液を採り、飲用とするが、これを発酵させ蒸留したものをヤシ酒 palm wine と呼ぶ。

 また、中果皮の繊維から縄・ブラシなどを作り、内果皮の核はスプーン・飾りなどに細工する。葉は、屋根を葺き、また籠・敷物などを編む。
 嵆含『南方草木状』下に、「椰樹、葉は栟櫚の如し。高六七丈。枝條無し。其の実、大 寒瓜の如し。外に粗皮有り、次に殻有り、円にして且つ堅し。之を剖けば、白き膚有り、厚半寸、味は胡桃に似て、極めて肥美なり。漿有り、之を飲めば酔うことを得たり。俗に之を越王頭と謂う。云く、昔 林邑王、越王と故怨有り。侠客を遣して、刺して其の首を得、之を樹に懸くるに、俄に化して椰子と為る。林邑王、之に憤り、命じて剖きて以て飲器と為す。南人、今に至るも之に傚う。当に刺されんとする時、越王大いに酔う。故に其の漿、猶お酒の如し、と」と。
 
   椰子の葉をかざしつつ来る男子
(をのこ)らの黄なるころもは皆仏子(ぶつし)にて
     
(1921セイロン・コロンボにて,斎藤茂吉『つゆじも』)
     

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